聞こえの仕組み

音というのは空気の振動です。それが耳介で集められて外耳道を通り、鼓膜へと到達します。鼓膜に空気の振動がぶつかることにより、鼓膜も振動します。鼓膜の裏側には耳小骨という小さな骨がくっついており、それにより振動のエネルギーが増幅されながら、耳の奥、側頭骨の中に埋まっている蝸牛(かぎゅう)という構造まで到達します。

蝸牛は巻き貝の様な形をした骨の管で、中にはリンパ液が入っています。このリンパ液が耳小骨から伝わってきた振動によってゆらされ、今度はリンパ液の振動が蝸牛の中を伝わっていきます。蝸牛の中にはコルチ器という振動のエネルギーを電気の信号に換える発電機のような仕組みがあって、ここで神経の興奮が起こります。ear

内耳から脳へは、蝸牛神経という神経がつながっていて、そこから脳幹、中脳、大脳へと音の信号は次々に伝えられます。脳では音を解析して、言葉として意味のあるものとして理解していくのです。

聴覚伝導路

難聴の分類

難聴は大きく分けて、伝音難聴、感音難聴、混合難聴に分類されます。それぞれ伝音性難聴、感音性難聴、混合性難聴と「性」を付けて呼ぶこともあります。どの分類になるかは、純音聴力検査で、気導と骨導を調べることによって分かります。

それぞれ以下のような違いがあります。

  気導 骨導 障害部位 主な疾患
伝音難聴 外耳・中耳 耳垢栓塞、外耳道炎、滲出性中耳炎
感音難聴 ↓↓ ↓↓ 内耳 騒音性難聴、加齢による難聴
混合難聴 ↓↓ 外耳もしくは中耳
+内耳
内耳障害を伴った、慢性中耳炎や急性中耳炎

以上の分類は、純音聴力検査(一般的に聴力検査と言っている検査)の結果で分けられるものですが、その他には後迷路性難聴というものがあります。“迷路”というのは蝸牛のことですから、それ以降、すなわち頭の中の聴覚伝導路のトラブルによる難聴です。音としては聞こえても言葉が聞き取りにくいといった特徴があります。

難聴の程度

難聴の程度 聴力レベル(dB) 聞こえの状態
軽度難聴 26~40 1 m の距離で標準的な音声を聞き取り、復唱することができる。
中等度難聴 41~60 1 m の距離で大声を聞き取り、復唱することができる。
高度難聴 61~80 良聴耳側で大声で話された場合、いくつかの言葉を聞き取ることができる。
重度難聴 81~ 大声でさえ聞き取り、理解することができない。

 

外耳に原因のある難聴

外耳炎・急性外耳道炎

外耳孔(いわゆる耳の穴)から鼓膜に至るトンネル状の部分が外耳道(がいじどう)です。急性外耳道炎の原因は耳かきのしすぎがほとんど。耳掃除により皮膚に細かい傷ができて、そこから細菌感染が起こり、耳の痒みや痛み、耳漏(耳だれ)、耳閉感(耳のつまる感じ)などの症状を起こします。外耳道が腫れ上がって狭くなってしまい、さらにそこに耳垢や耳漏が詰まってしまえば難聴(伝音難聴)も起こります。
ただし、両側の難聴を起こすことは滅多にありませんし、外耳道炎自体が一過性ですから、これだけで補聴器の適応となることはありません。

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耳垢栓塞

耳垢が外耳道につまった状態。
通常、鼓膜表面でできた耳垢は勝手に手前へと移動し、無意識のうちに耳の穴から落下していますが、耳垢の移動の働きが悪い場合や、湿型耳垢(いわゆる”あめ耳”)の場合は耳垢が溜まりやすくなります。耳掃除も細めの綿棒などで耳垢を掻き出すように行えばよいのですが、逆に押し込んでしまうと奥へ溜まってしまうことがあります。
ほとんどが無症状なのですが、多量に溜まると耳閉感(耳のつまった感じ)や難聴の原因となります。
よくご高齢の方で、ある日突然会話も出来ないほど聞こえが悪くなることがあります。それは、もともと加齢による難聴があっても、何とか会話可能なレベルだったのに、それに耳垢による難聴が加わって、いよいよ会話も不自由になってしまったというケースもあります。
耳垢を除去することにより聴力は改善しますが、頑固な耳垢であれば、2,3回通院しなければいけないこともあります。

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外傷性鼓膜穿孔

物理的な外力で、鼓膜が破れた状態。誤って耳かきなどで直接鼓膜を突っついて起こることが多いのですが、意外なところでは、耳に平手打ちを食らって、強い気圧がかかって鼓膜が破れてしまうこともあります。

鼓膜が破れたからといって、全然聞こえなくなるということはありませんが、鼓膜に開いた穴の大きさに応じて様々な程度の難聴が生じます。鼓膜には再生能力がありますので、開いた穴が小さければ数日程度で治癒します。ただし、残った鼓膜や中耳に感染を起こすと耳漏(じろう;耳だれ)が出て、鼓膜が再生しにくくなってしまいますので、感染の予防が肝心です。具体的には耳に水を入れないように気を付けることと、抗生剤を飲むことなどです。

不幸にも鼓膜の大部分が損傷した場合などは穿孔が閉じなくなることもあり、その場合は、鼓膜形成術といって筋膜などを使って鼓膜を張り替える手術が必要です。手術は日帰りで可能な場合と、数日間の入院を要することもあります。

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先天性外耳道閉鎖症

多くの場合鼓室、耳小骨奇形を伴う。両側性の場合は早期より骨導式補聴器装用による聴覚言語訓練を行い4〜5歳頃に手術を行うことが推奨されています。

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サーファーズイヤー

サーフィンや潜水などにより冷水が度々外耳道が刺激されることにより、外耳道の骨に外骨腫というものが出来ることがあります。両側の外耳道に、多発性に外骨腫が出来ますので、耳閉感や難聴を起こします。両側が多いです。

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中耳疾患による難聴

急性中耳炎

急性上気道炎(いわゆる風邪)に合併して起こることがほとんどで、子供に多い疾患です。
主症状は耳の痛みですが、耳閉感(耳のつまった感じ)や軽度の難聴も伴います。小児は症状をはっきり訴えませんので、風邪引きにともなって不機嫌、夜泣きなどがあれば急性中耳炎を疑います。
成人では、かかる頻度は少なくなるものの、内耳炎を伴って混合性難聴となることもあり、この場合は難聴が長引くこともあります。

急性中耳炎

(急性中耳炎の時の鼓膜の様子と、中耳腔の模式図)、

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滲出性中耳炎

鼓室に粘液が貯まった結果,鼓膜が振動しにくくなり、音のエネルギーが内耳まできちんと伝わらず、耳閉感(耳のつまる感じ)、難聴が起こります。原因は耳管機能障害で、アデノイド、副鼻腔炎、急性鼻炎、アレルギー性鼻炎などに続発、あるいは合併します。

急性中耳炎と並んで幼児に多い中耳炎ですが、急性中耳炎と違って痛みはないので、見逃されていることも多いようです。2〜5歳程度のお子さんで、「呼んでも気がつかない。」、「聞き返しをする。」などの症状があれば、滲出性中耳炎の可能性が高くなります。この年代では自分から異常を訴えることはほとんどなく,家族も気づかないことも結構あります。この年頃に両側の難聴があると、言葉を覚えるのが苦手になったり、他の子供や周りの大人とコミュニケーションを取るのが苦手になったりするので要注意です。
3歳児健診や学校健診などで初めて指摘されることも多いが、自己判断で「何も症状がなさそうだから・・・」と見過ごすことなく、耳鼻科に連れて行くべきです。
診断は鼓膜所見、聴力検査、ティンパノメトリーにて比較的容易につきます。治療は副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎があればまずはその治療を行いますが、鼓室内の滲出液が減らずに聴力の改善もない場合は、鼓膜切開術や鼓膜チューブ留置(チュービング)という治療が行われます。また、アデノイド切除術が有効な場合も多くあります。

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好酸球性中耳炎

約10年前から報告されるようになった、比較的新しい中耳炎の一つのタイプ。鼓室内に粘液が貯まり難聴や耳閉感を来す中耳炎で、滲出性中耳炎に非常に似ていますが、滲出性中耳炎が子供に多いのに対して、当疾患は30〜50代の大人で、もともと喘息を持っている方がほとんど。また副鼻腔炎の合併も多いのですが、普通の風邪に続発する副鼻腔炎ではなく、副鼻腔粘膜に好酸球が悪さをして炎症を起こす、好酸球性副鼻腔炎を伴います。

好酸球性中耳炎では中耳粘膜に好酸球が浸潤することにより、中耳粘膜がブヨブヨに腫れて、ひどくなると鼓室内に充満します。またピーナッツバターのようなネバネバした粘液(ムチン)が貯まるので、鼓膜が持ち上がってくることもあります。

従来知られていた単純な慢性中耳炎や滲出性中耳炎では、伝音性難聴が主体であり治療により聴力は改善することが多いですが、好酸球性中耳炎では早期から内耳障害も併発し、感音難聴を起こすこともあり、この場合は例え中耳の状態が良くなっても難聴が治りにくくなります。

耳管通気法や中耳根本術などは、当疾患に対しては無効であるばかりか、難聴進行の誘因となることもあり、注意が必要です。

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慢性中耳炎

急性中耳炎が遷延化して慢性中耳炎になります。急性中耳炎では鼓室内に溜まった膿が鼓膜を破って流れ出しますが、炎症が治まれば鼓膜に開いた孔は自然に塞がります。ところが、中耳炎を繰り返すことにより中耳粘膜が機能不全に陥り、耳漏(じろう;耳だれともいう)が持続したり、鼓膜に穴がいたままになるのです。また耳小骨が炎症により溶けたり、動きが悪くなったりしますので、その結果難聴となってしまします。初期には伝音性難聴であり手術により鼓膜を張り替えたり、耳小骨を再建したりすることにより、聴力の改善の見込めるケースも多いのですが、時間が経つと徐々に内耳障害も生じてくるので、混合性難聴となり手術による聴力改善も難しくなってきます。
高齢者にはまだまだ多く見受けられる疾患ですが、若年者ほど少なくなってきています。それは育った環境が衛生的になってきていること、急性中耳炎が抗生剤などによって適切に治療されていることによると考えられます。

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真珠腫性中耳炎

真珠腫性中耳炎は、鼓室内で角質が増殖するために耳小骨が破壊され難聴を来します。半規管を角質の固まりである真珠腫が圧迫したり、直接破壊したりするとめまいがが生じます。また顔面神経麻痺を生じることもあるので、単純な慢性中耳炎よりもたちが悪い中耳炎といえます。
難聴のタイプとしては、病態によって伝音難聴から感音難聴まで様々な聴力型を示します。治療は手術の行われることも多いですが、外耳道から真珠腫を摘出する保存的療法が行われることもあります。

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耳硬化症

迷路骨包内の骨が一旦吸収されて、その後硬い骨に置き換わります。その結果アブミ骨底の動きが悪くなって、耳小骨を伝わってきた振動のエネルギーが内耳へ伝わりにくくなって伝音難聴を生じます。その他、障害される部位によっては混合難聴になることもあります。治療には手術が行われます。

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内耳性難聴

突発性難聴

突発性難聴とは、特別な誘因がなく,ある日突然発症する内耳性難聴です。症状は突然聞こえなくなることですが、耳鳴りやめまい、聴覚過敏などを伴うこともあります。直接的な原因は内耳へのウイルス感染、内耳の微小循環障害、自己免疫(自分の身体を攻撃しようとする抗体が作られ、内耳をターゲットとして認識、破壊する)などが考えられています。風邪症状や過度の心的ストレス、過重労働などによる体力的な疲れなどがあると発症しやすくなります。
内耳は耳を構成している中で最も深部にあり、しかも微細な構造が聞こえの機能を支えているので、そこで何が起こって突発性難聴になるのかは、まだ推測の域を出ないところがあります。
ステロイドの点滴療法が行われることが多いのですが、必ずしも全例に効果があるわけではないので、その他には高圧酸素療法、抗ウイルス剤の点滴、ビタミン剤、循環改善剤などを組み合わせて治療します。発症後の時間経過とともに、治る確率は低くなりますので、出来るだけ早く治療を始めることが大切です。
多くの場合一側性ですから、反対側の聴力が正常であれば補聴器は必要でないこともも多いですが、反対側にも何らかの難聴があれば、補聴器の適応となることもあります。

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急性低音障害型感音難聴

内耳のトラブルが原因で、ある日突然聞こえが悪くなるのは突発性難聴と同様ですが、低音障害型感音難聴では125〜500 Hz(ヘルツ)の低音のみの聞こえが障害され、また比較的治りやすいので、突発性難聴とは病態が異なるものと考えられています。
症状は突然起こる難聴ですが、耳閉感(じへいかん;耳の塞がる感じ、耳のつまる感じ)の強いことが特徴です。多くの場合は片側だけなのですが、両側に発症することもあります。起きていられないほどのめまいは伴わず、もし耳閉感とともにめまいが起こる場合は低音障害型感音難聴よりもメニエール病の可能性が高くなります。
直接的な原因はメニエール病と同様に内リンパ水腫が考えられています。発症のきっかけとなるのは過重労働や人間関係などによる心理的、体力的ストレスや寝不足などのことが多いようです。
治療には以前は突発性難聴に準じてステロイドが使われることが多かったのですが、最近では内リンパ水腫を軽減するため高浸透圧利尿剤(イソバイド、メニレットゼリー)を最初に使うべきと考えられるようになりました。
ほとんどのケースは数日程度で改善しますが、一部、発症後に難聴がさらに進行するケースもありますし、繰り返すこともあります。

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メニエール病

メニエル病、メニエル氏病ということもあります。

難聴、耳鳴、めまいを三主徴とする。めまいを伴わないものは蝸牛型メニエール病といいますが、めまいがない場合は低音障害型感音性難聴との鑑別が難しくなります。かつて、めまいがすれば全てメニエール病といわれた時代がありましたが、実際にはめまいのする患者さんのうちの数パーセント程度と思われ、さほど頻度は高くありません。
難聴は発症時は低音障害型が多いのですが、発作を繰り返す毎に水平型に近づきます。耳鳴は非発作時にも持続することもありますが、発作時に強くなります。めまいは発作時には回転性(周りがぐるぐる回る、自分がぐるぐる回る)に強く、特に初回発作時が最も強いです。ある程度落ち着いてくるとフワフワした感じや、まっすぐ歩こうっとしてもどちらかに寄りそうな感じになる程度であることも多いになります。

治療は薬物療法が中心で、非発作時には高浸透圧利尿剤(イソバイド、メニレットゼリー)、ビタミンB12などを内服しますが、発作時にはそれに加えてステロイドを用いることもあります。また、発作に対する恐怖が強く、それがまたストレスになり発作を誘発してしまうような悪循環に陥っている場合には、精神安定剤や抗不安薬も併用します。めまいに対しては手術も有効なケースもありますが、進行したメニエール病の聴力を改善させる術式はありません。

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聴神経腫瘍

聴神経腫瘍は、第八脳神経である聴神経にできる神経鞘腫。良性の脳腫瘍です。腫瘍は内耳道(ないじどう)という聴神経を入れた骨の通路の中にできますが、大きくなると頭蓋内の小脳と脳幹の境目の方向へと進展します。
初期の症状は、難聴と耳鳴とめまいであり、突発性難聴やメニエール病のような症状で発症することも多く、問診や聴力検査だけでは区別がつきませんが、ABR(auditory brainstem evoked responceの略、日本語では聴性脳幹反応)といい、音を聞いてもらいながら脳波を記録するような検査や、MRIで診断できます。

耳鼻咽喉科と脳神経外科の境界領域の疾患なのですが、初発症状が耳の症状やめまいなので、耳鼻科を初診することが多いです。治療は手術的に腫瘍を摘出するか、放射線療法の一つであるガンマナイフかということになりますが、腫瘍の部位や残った聴力の程度などにより検討する必要があります。また、手術に際しては聴力を残すか、あきらめるか、顔面神経へのダメージの危険をいかに避けるかということが問題となります。もう一つの選択としては、MRIを定期的に行って経過をみていくということもありえます。

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遅発性内リンパ水腫

遅発性内リンパ腫は、もともと片耳の高度な感音性難聴(原因ははウイルス性難聴や突発性難聴など様々)があって、一旦は聴力が固定して落ち着いていたにもかかわらず、数年から数十年を経て、発症します。同じ耳の半規管の障害が原因となりメニエール病に似た回転性のめまい発作を起こすもの(同側型)と、反対側の耳の難聴、耳閉感が出現して、めまいも伴うもの(対側型)があります。
同側型では、聴神経腫瘍との鑑別が特に重要となるし、対側型ではたまたま反対側に生じたメニエール病との鑑別が難しいケースが多いです。

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特発性両側性感音難聴

 

加齢による感音性難聴 (老人性難聴)

特に耳の病気をしたことがなくても、聴力は加齢とともに高音域から徐々に低下してきます。聴力検査をすると特に難聴の自覚のない人でも早い人では30代から、また多くの人は50代から高音部から徐々に聞こえにくくなってきます。急激な変化はないので本人は自覚していないこともありますし、また聞こえなくなることを恥ずかしがる風潮があるので、人の話が聞き取れなくなっても聞こえたふりをしてしまうこともあります。難聴によるコミュニケーション障害が生じると、当人は周囲から孤立してしまいがちになったり、受け答えがちぐはぐになってしまうことにより、実際よりも知能が低下したような誤解を受けてしまうことすらあるのです。残念ながら治療法はないので、ある程度進行してコミュニケーション障害が生じる場合は補聴器を付けるのが最善の策となります。さらに家族を中心とした周囲の人々が、難聴者の置かれている状況に理解を示していくことが大切になってきます。具体的には、はっきりゆっくり話すこと。聞き返されてもイライラせず根気よく話すこと、などが大切です。

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音響外傷

音響外傷とは大きな音を聞くことにより、内耳がダメージを受けて聴力が低下する病気。特に非常に大きい音、例えばジェット機の爆音や爆薬が破裂する音(130デシベル以上)などを聞いた場合は、ほとんどの人が例外なく、しかも一瞬音を聞いただけだけで不可逆性の難聴が生じるのです(狭義の音響外傷)。
狭義の音響外傷を生じるほどではないが、比較的大きい音、例えばロック・コンサートやクラブなどの大音響の音楽(110デシベル以上)でも難聴は生じます。音が大きければ大きいほど聴力が低下しやすいのはもちろん、音を聞いた時間が長くなるほど悪くなりやすい傾向があります(広義の音響外傷)。広義の音響外傷は同じ時間だけ同じ大きさの音を聞いたとしても、難聴になるならないは、個人差があります。また広義の音響外傷の場合、難聴は多くの場合一過性で回復が見られるのも、狭義の音響外傷との差です。

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騒音性難聴

騒音性難聴は、85デシベル以上の騒音を一日8時間以上、10年間聞き続けると難聴が生じます。
職業上、長時間騒音の環境下で働いている人はなりやすいです。
発症初期には自覚症のないこともあり、健診などの聴力検査で4,000 Hzの閾値上昇を指摘されて初めて気付くことが多いです。進行すれば他の周波数も聞こえづらくなるので、難聴を自覚するし、耳鳴が生じることもあります。
治療により改善することはないので、騒音下で働く人は定期的に聴力検査を受けて、もし4,000 Hzの閾値上昇が起こってきたら、配置換えを受けてそれ以上騒音に曝されないようにすることです。騒音を聞かなくなった時点から、難聴が進行することはありません。

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